「社員インタビューばかりになってしまう」を抜け出す──採用広報のコンテンツを5つの切り口で組み立てる考え方
公開日:2026年8月29日
採用広報を始めてはみたものの、「次に何を書けばいいか分からない」「気づくと社員インタビューばかりになっている」——こうした壁にぶつかる人事担当者は少なくありません。この記事では、コンテンツの種切れを防ぐための考え方として、当社が支援先で実際に使っている枠組みを紹介します。
なお、以下で紹介する分類は、いずれも一般に確立した業界標準の用語ではなく、当社が独自に整理し、支援先の採用広報コンテンツを設計する際に使っている考え方です。その点をあらかじめお断りしたうえで、皆さんが自社のコンテンツ企画を考える際の道具としても応用できる内容として紹介します。
求人票の言葉だけでは伝わらないもの
採用に関わる情報は、大きく二種類に分けられます。給与・待遇・業務内容・勤務地といった、募集要項に条件として書ける情報を「ハードスペック」、社風・一緒に働く仲間の人柄・実際の職場の雰囲気など、条件の文言だけでは伝わらない魅力を「ソフトスペック」と呼びます。
求人票はハードスペックを伝えるための書式としてはよくできていますが、「どんな人たちが働いているのか」「制度は実際に使われているのか」といったソフトスペックまでは、条件を並べるだけでは伝わりません。特に、給与水準や待遇面で他社と大きな差をつけにくい会社ほど、このソフトスペックの発信量が採用競争力を左右します。
ここで注意したいのは、ハードスペックとソフトスペックは対立する情報ではなく、両方が揃って初めて候補者の判断材料になる、という点です。条件は良いのに魅力が伝わらない、あるいは魅力は伝わるのに条件が分からない——どちらも採用広報としては片手落ちです。採用広報のコンテンツは、求人票が担いきれないソフトスペックの部分を補う役割だと捉えると、何を書くべきかが見えやすくなります。
コンテンツに落とす5つの切り口
とはいえ、「ソフトスペックを発信しよう」というだけでは、結局は社員インタビューに偏りがちです。社員インタビューは有効なコンテンツの一つですが、それだけを繰り返すと、似たような記事が並ぶ状態に陥りやすくなります。
そこで当社が使っているのが、採用広報コンテンツを5つの切り口で捉える考え方です。頭文字をとって「ABCDE分類」と呼んでいます。
- Associate(人):会社を構成する従業員や事業上のパートナーに関するコンテンツ(創業秘話、経営陣インタビュー、社員インタビューなど)
- Business(事業):会社のビジネスに関するコンテンツ(事業内容、自社の強み、製品・サービスの説明、取引先の声など)
- Career(キャリア):キャリアに関するコンテンツ(求める人材像、キャリアパス、評価制度、研修制度、選考プロセスなど)
- Destination(目指す姿):ビジョンやミッションなど会社が目指す理念に関するコンテンツ(ビジョン・ミッション・バリュー、会社名の由来・沿革、社会貢献など)
- Environment(環境):待遇や福利厚生など勤務環境に関するコンテンツ(社内イベント、オフィス環境、リモートワークをはじめとした働き方、福利厚生など)
社員インタビューは、このうち「Associate(人)」というひとつの切り口にすぎません。5つの切り口を意識的に用意しておくと、事業内容や制度、目指す姿といった、インタビューだけでは伝わりにくい側面もバランスよく発信できるようになります。企画に迷ったときは、直近数本のコンテンツがこの5つのどこに偏っているかを見直すだけでも、次に何を書くべきかの手がかりが得られます。
たとえば「エンジニアの1日」を紹介する記事を出したあとに、「なぜこの事業をやっているのか」というBusinessの記事、「入社2年でどうキャリアが広がるか」というCareerの記事、と切り口を変えて続けていくと、同じ社員が何度も登場せずに済み、読み手にとっても会社の姿が多面的に見えてきます。逆に、5つのうちどれか一つだけを掘り下げ続けると、その切り口で語れる話題はいずれ尽きてしまいます。
社員インタビュー偏重に陥る理由と、配分の考え方
社員インタビューに偏りがちなのには、理由があります。取材相手を1人決めて話を聞けば形になりやすく、他の切り口に比べて企画のハードルが低いためです。「Business(事業)」や「Destination(目指す姿)」を扱おうとすると、経営層への取材や資料の整理が必要になり、腰が重くなりがちです。結果として、手をつけやすいAssociateばかりが積み上がっていきます。
この偏りを避けるために有効なのが、5つの切り口をあらかじめコンテンツカレンダーに割り当てておく進め方です。毎回ゼロから企画を考えるのではなく、「次はCareerの切り口で、評価制度について書く」というように、切り口を先に決めてからテーマを詰めると、Associateへの偏りを構造的に防げます。すべての切り口を均等な本数にする必要はありませんが、一定期間を振り返ったときに5つのどれかが極端に欠けていないか、という視点で点検する習慣が役立ちます。
具体的には、3ヶ月で12本のコンテンツを出すとすれば、Associateに偏らせず5つの切り口へおおよそ2〜3本ずつ振り分ける、といった配分を先に決めてから個別のテーマを埋めていく進め方が現実的です。取材が必要なAssociateやCareerの記事は準備に時間がかかる一方、BusinessやDestinationは既存の会社紹介資料やビジョン・ミッションの文書を土台に書き起こせることも多く、実は着手のハードルが思っているより低い場合があります。
なお、ここで紹介したABCDE分類は、当社が支援先の採用広報コンテンツを企画する際に使っている考え方であり、皆さんの会社の候補者に向けた発信を組み立てる道具として応用できるものです。当社自身がこの記事を含む発信をこの5分類だけで設計しているわけではなく、あくまで採用広報コンテンツの企画整理に使う枠組みとして紹介しています。
まとめ
「何を書けばいいか分からない」状態の多くは、ソフトスペックという発信すべき情報の存在に気づいていないこと、そしてその情報を整理する切り口を持っていないことに起因します。ハードスペックとソフトスペックの違いを意識し、ABCDE分類で発信を配分する——この2つを押さえるだけで、社員インタビュー頼みから一歩抜け出したコンテンツ企画がしやすくなるはずです。
他社との違いを比較しながら検討したい方は、比較ガイドもご覧いただけます。