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コラム

求人広告を出しても応募が集まらないのはなぜか──「見えていない候補者」に気づくところから採用広報は始まる

公開日:2026年8月29日

「求人広告の掲載を続けているのに、応募が思うように増えない」「応募は来るものの、入社後にミスマッチが目立つ」——こうした悩みを抱える人事担当者・経営者は少なくありません。「採用広報」という言葉を見聞きしたことはあっても、自社に本当に必要かどうかを判断しきれていない、という方も多いはずです。この記事では、なぜ求人広告だけでは限界があるのか、その構造を整理します。

採用の現場では、候補者を「転職顕在層」と「転職潜在層」に分けて捉えることがあります。顕在層とは、実際に転職活動を始めており、求人メディアやエージェントに登録して能動的に情報を探している層です。求人広告は、この顕在層に情報を届けることに特化した手法であり、掲載すればするほど、探している人の目に触れる確率は上がります。

一方、潜在層とは「今すぐ転職するつもりはないが、良い会社があれば考えてもいい」という段階の人たちを指します。転職サイトに登録しているわけでも、求人情報を積極的に探しているわけでもないため、求人広告をどれだけ出稿しても、この層の目に触れることはほとんどありません。

そして実務上ここが重要なのですが、母数で見ると、顕在層より潜在層のほうが圧倒的に多いのが実情です。つまり「応募が集まらない」という悩みの正体は、多くの場合、求人広告という手法が届く範囲の外側に、まだ出会えていない候補者が大勢いる、という状態そのものだと言えます。

求人広告は、いわば「探しに来た人」を待つ仕組みです。求人メディアに掲載し、検索やスカウトを通じて見つけてもらう。この仕組みは、能動的に転職情報を探している顕在層には有効ですが、そもそも探していない潜在層には構造上リーチできません。広告の出稿量を増やしても、探していない相手には届かないという前提は変わらないのです。

潜在層に情報を届けるには、相手が転職活動以外の目的で接する場所——検索結果、SNS、知人からの紹介など——に、あらかじめ自社の情報を置いておく必要があります。これが、自社の魅力や働く環境を継続的に発信する「採用広報」という活動の役割です。求人広告のように掲載期間が終われば役目を終えるものではなく、公開後も検索や紹介を通じて長く使われ続けることも、潜在層との接点として機能しやすい理由のひとつです。裏を返せば、採用広報は出稿してすぐに応募が増えるような即効性の高い施策ではなく、効果が数字に表れるまでに一定の期間を要する、中長期の取り組みだということも押さえておく必要があります。

なお、採用広報には大きく2種類あります。ひとつは、いまお伝えしているような、転職潜在層に向けたオウンドメディアでの記事発信など、検索や紹介を通じて長く使われ続ける継続的な情報発信です。もうひとつは、転職顕在層に向けた、会社説明会・採用ピッチ資料・転職フェアへの出展といった、すでに転職を検討している候補者に直接アプローチする活動です。本記事で扱うのは前者、転職潜在層に向けた採用広報です。

たとえば「良い会社があれば考えてもいい」という段階の人が、たまたま検索でたどり着いた記事から自社の事業内容や働く環境を知り、数ヶ月後に転職を意識し始めたタイミングで思い出してもらえる——採用広報が機能するのは、こうした遅れて効いてくる接点の積み重ねによってです。求人広告のように「出稿した週の応募数」で効果を測ろうとすると、この時間差そのものを見落としてしまいます。

もう一つ、押さえておきたい構造があります。採用の現場には長らく、「とにかく多くの応募を集め、選考でふるい落としていけば、その中に良い人材が残るはずだ」という発想がありました。応募数、つまり量を重視し、求人を出して「待つ」姿勢で候補者を集めるという、従来型の採用の進め方です。

しかし、応募数を積み上げたとしても、その中に自社に合う人材が含まれているとは限りません。母集団の量を追うほど、選考にかかる手間だけが増え、ミスマッチも一定の割合で発生し続けます。加えて、労働人口の減少により、企業は「選ぶ側」から「選ばれる側」へと立場が変わりつつあります。限られた母集団の中でいかにマッチング精度を高めるか、という発想への転換が、いまの採用市場では求められているのです。

「応募は来るがミスマッチが多い」という悩みも、実はこの構造と地続きです。広く浅く集めた母集団の中から選考で絞り込む、という進め方そのものが、量は確保できても質までは保証しない仕組みだからです。求人広告の出稿量を増やす、掲載媒体を増やすといった対症療法だけでは、この構造は変わりません。

ここまでの整理をふまえると、企業側に求められる変化は大きく二つあります。

一つは、求人広告だけではカバーできない潜在層に、採用広報という手段で届く発信を始めること。もう一つは、母集団の量を追うのではなく、自社に合う人材とのマッチング精度を高める方向へ、採用活動全体の重心を移していくことです。

いずれも、明日から始めて来週成果が出るような施策ではありません。だからこそ、短期の応募数だけで良し悪しを判断せず、認知から入社後の定着までを見据えた設計が必要になります。

まずは自社の採用活動が、いまどちらの課題を抱えているのかを切り分けて考えるところから始めてみてください。「そもそも自社が知られていない」のか、「知られてはいるが応募に踏み切ってもらえていない」のか。この記事で扱った顕在層・潜在層という区分と、量を追う採用のあり方が抱える限界は、その切り分けを行うための最初の手がかりになるはずです。

なお、採用広報に取り組むといっても、社員インタビューを闇雲に発信すればよいわけではありません。何をどんな切り口で発信するかを整理する考え方については、別の記事で扱っています。まずは自社の課題がどちらに近いのか、次のセルフ診断で確認してみてください。

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